萌黄色の桜 「御衣黄」

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弾けるように春が野山を駆け巡る頃、目に焼き付いて離れない桜を思い出します。その名は「御衣黄 ギョイコウ」、萌黄色のふっくらした桜です。
この桜に出会った頃、迷っていたことがあり、生き方について定まっていないというか、ブレる自分を感じていました。そこには誰かのためにという思いが先に立ち、自分は何をしたいかが霞んでいたように思います。
御衣黄は葉と見まごうような緑色の蕾が萌黄色の花となり、咲き終わる頃に黄色く褪せて赤い筋が入ります。ピンク色の桜に比べると華やかさや艶やかさには欠けるかもしれませんが、まるで生き物が成長するかのように姿を変える花に、私は強さと柔軟さ、潔さを感じました。人々に賞賛されるピンク色の桜と相対するどこか寂しげな萌黄色の御衣黄、忘れられない桜です。


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桜に見せられる理由はなんでしょう。
染井吉野に大島桜、山桜に八重桜、枝垂れ桜、啓翁桜もポピュラーになりましたし、河津桜や玉縄桜、オカメ桜と呼ばれるものもあります。日本国内には600品種もの桜があるそうですが、これほど人々に愛される木の花はありません。満開の時期には人々が花見にでかけ、名所となれば桜の木の周りが溢れるほど…人は桜に何を感じ何を思うのでしょう。風に舞う花びらが川や池に浮かび、やがて流れて花筏となります。可憐な蕾、咲いた姿の艶やかさ、散って消える儚さ… 幾重にも楽しめる木の花です。


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拙宅からすぐの台峰の森には、山桜や大島桜の大樹がありますが、おろち桜と呼ばれる樹齢およそ100年くらいでしょうか、山桜があります。根元から何本か太い幹が分かれていて、空まで届くような豪快な枝振りはまさにヤマタノオロチ、街中の艶やかな桜とは違った趣を見せます。向かい側の山並みが薄桃色からウグイス色に変わる頃、台峰のおろち桜は、見上げる私たちのためというより、青空に向かってどうだとばかりに花を咲かせるおろち桜に、私は強さと気高さを感じます。見頃はたぶんこの週末。今年の桜は長く楽しめそうです。







Commented by hanamomo08 at 2017-04-07 14:41
御衣黄桜は、母から教えてもらいました。
最初は目立たない色ですが、なかなか高貴な風情があり、好きなさくらになりました。
娘が卒業した中学校にもあり、毎年見に立ち寄ります。
だんだん薄紅色になる様子、春が進んだな~と思いながら見つめます。

そのときの自分と花、その花がいっそう思い出深くなりますね。
『さあ、どうだ!』とばかりに咲き誇るおろち
桜見たいものです。
下の記事にもコメントしてしまいました。
ごめんなさい。
Commented by miki3998 at 2017-04-07 22:04
嬉しいなあ、momoさんのコメントをひとつひとつ読みながら、まるで目の前にいて一緒に話しているような気分です。お忙しいでしょうに、全部目を通してくださったんですね。
街は花見の人でいっぱい、ソメイヨシノやオオシマザクラ、どれを取っても美しいには違いないのだけれど、一本の桜にこれほどの思い入れがあるのは、この、御衣黄だけです。ここ数年で10歳は歳をとったんじゃないかと思えるほどいろんなことがありましたが、そのひとつひとつがこの御衣黄の姿と重なるんですよ。
おろち桜がえる台峰は、ことし開花が遅くて、まだ満開までは日があります。いつかmomoさんと散歩をしながら、あの大木を見上げて見たいものです。
by miki3998 | 2017-04-05 11:11 | | Comments(2)

森とラジオと食卓と…草花の仕事とラジオパーソナリティ、やってます。


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