2014年 01月 12日 ( 1 )

里帰り

b0083902_17443189.jpg
                     < 父の好きなカリントウと干し芋 >

一月の里帰りは何年ぶりだろう。夏か秋に仕事を兼ねて帰ることはあっても、ただ親の顔を見に帰るなんてことは3年ぶり…いや、もっとかもしれない。母が鎌倉に来ることはあっても、体の不自由な父はもう新幹線に乗ることは無理だろう。たまに電話で話していても、すっかり気が弱くなったのか、途中から泣き出すようになった。理由はないのだ、単に「風邪ひぐなよ。飯、ちゃんと食べでらがぁ…」の二言三言で感極まるのだ。
こんな親不孝娘でも、顔を見せれば元気になるだろう。雪で閉ざされた毎日、年寄りの楽しみなどもう何もないのだ。ひたすら娘や孫の無事のみ願って生きているような親である。案の定、「ただいま。」と言って帰った途端、「ありがど、ありがど。」と言って顔をくしゃくしゃにして泣いている。来た途端こうだ。鎌倉に帰る日はもっとだろうなあ…ちょっと辛いな。

タクシーの運転手さんの話では、私が来るまでは、穏やかな日が続いていたそうだが、着いたその夜からぐっと冷え込み、日中も雪がちらつくようになった。そう言えば、暮れよりも小正月のあたりにドカ雪がふったりしたものだ。まあ別に出かけるわけでもなく、誰と会うわけでもない。朝起きたら犬の散歩をして、食事の手伝いやら世間話やら、買い物を一緒にしたり、風呂に入る父の背中を流してやるくらいしかすることはないのだ。というよりむしろ、そんなことをしたくて帰ってきたのだ。
b0083902_1744311.jpg


犬の散歩に出た際に、雪の中を元気にそり遊びをする子供達がいた。近くの保育園の園児たちだ。鼻水を垂らしながら土手を駆け上ったり、転んでも気にせず走り回る二、三歳の子供たち。いいなあ、子供は風の子だな。雪国だから雪ん子か、うん…などとブツブツ独り言を言いながら犬に引かれて歩く。雪と風が顔を刺し、長靴のつま先が凍りそうに冷たくなる。私が居ない時は母が、姪っ子がこうして散歩に出ているんだろうな。冬の日常はこんなものだ。

b0083902_17443216.jpg


父を床屋に連れて行った。右手右足が不自由なので、最近は電気カミソリも持ちにくくなったようだ。まるで仙人のような髪と髭、ちょっとびっくりした。家の者に頼みにくいのか、単にせっこぎ(めんどくさがりやのこと)して行かないのか、さすがに自分でもこれはいかんと思ったのか、「床屋さ連れでってけろ。」ということになった。車で近所の床屋に…確かに不自由な身体で床屋の店先まで行くのは無理。まして雪道、タクシーで行くにしろ介添えは体力のある者が必要となる。父は遠慮していたのかもしれないなあ。我慢してできるだけ世話をかけないようにしていたのかも。
床屋の主は60代の女性で、父のことをよく知る人だった。「前は犬を自転車に乗せて走る元気なおんじさんだったもねぇ。」そう、その通りだ。事情を知るその人は、散髪と髭剃りを丁寧に時間をかけてしてくれた。その間、父と世間話をしながら。そうゆう店が近くにあってよかった。年寄りが話をしたり聞いてくれる人がいる店を大事にしたい。その人は父が車に乗るまで手を取り肩を貸してくれた。次にまた父をお願いしますと挨拶をして帰ってきた。

b0083902_17443312.jpg
                < 弟が書いた娘のためのアンチョコ。この言葉は死語? >

同居する弟夫婦の娘は受験生、今が本番真っ盛りだ。家の中のあちこちに紙に書いたアンチョコが貼ってある。早いものでこの春高校生になる。まるでかぐや姫を育てる年寄りみたいだと笑って過ごしたものだが、もう15歳、そして両親は二人とも80歳をこえた。気丈な母でなければここまでやってこれなかったろう。子煩悩な父でなければ今の私もない。わがままな娘を泣きじゃくりながら玄関先まで杖をついて見送る父、87歳。
また来るね。
もう私は新幹線に乗っている。

b0083902_17443330.jpg

by miki3998 | 2014-01-12 16:48 | Trackback | Comments(12)

風と海と丹沢が好き。山の家での毎日を綴っています。鎌倉FMのパーソナリティです。


by miki3998
プロフィールを見る
画像一覧