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読むラジオ 9月27日 「秋はどこへ行きたい?」

 
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  シマススキと吾亦紅(吾木香とも書きます)、中秋の名月には風にそよぐこんな感じの花あしらいが好きだ。夕空に赤とんぼが飛び交い、遊び疲れた弟の手を引いて家路を急いだころを思い出す。

  
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特に御馳走をお供えするわけではないが、団子くらいは・・・と、白玉粉があったので薄い桃色の団子を作って月が出るのを待った。どうでもいいことだけど 私は太陽よりも月が好き、昼よりも夜派だ。星が降るように瞬く秋の空は 空気が澄んでピーンと張った寒い感じがより好ましい。

  
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         ( 午前3時ごろの月と金星。 お互いが寄り添うように輝く。)

  

  9月27日、暗く重たい雲が垂れこめて、ほぼど土砂降り状態。スタジオも寒くて思わず身震いしてしまった。つい先日まで半そででクーラーなしには過ごせないような天気だったのに、今朝は首元が寒くてマフラーを巻いてしまった。

  「秋になったら行きたくなるところ・・・?」今朝のおはトークのお題だ。芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋・・・秋はどこに行こうか? 
  相棒の城後さんは根っからのスポーツマン。昨日今日と、大荒れの海でサーフィンを楽しむ彼は、秋にはやっぱり温泉だと反応。つい先日も大島までカヤックで10時間かかって往復海の旅を楽しんできたらしい。温泉で疲れた体を休めるのもいいかもしれない。紅葉を楽しみながら露天風呂で一息ついて、上手いものを食らう・・・いいなあ、それも。
  

  
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  先週の土曜日、銀座ル・セット開催された小川隆夫ONGAKUゼミナールに行ってきた。番組ではその様子を紹介。ほぼ隔月でジャズ好きの仲間が 小川さんのとっておきの楽屋話を聞きながら美味い酒と音楽を楽しむ会。この日は「この人この一曲」と題して、ジャズ界の重鎮達の代表曲を鑑賞。やっぱり秋は、好きな音楽にどっぷり浸かるお気に入りの場所に行きたい。コンサートもいいけれど、小さい店で生の演奏を聴きながら たまには一人の時間を満喫する・・・なにせ 秋の夜は長いのだから。 ≪ 小川隆夫ONGAKUゼミナールのブログはこちらをクリック ≫ 私も写ってます!(笑)
そしてゼミをスムースに進行させるお手伝いをしている愛しのyuricozちゃんのブログはこちら。 とっても楽しいブログです。ぜひ!

  

  
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   番組中にかけた曲
    1、 お願いDJ             サザンオールスターズ
    2、 荒涼               大貫妙子 & 松任谷正隆
    3  過ぎ去りし永遠の日々       coba
    4、 ムーンライトセレナーデ      小野リサ
    5、 リベルタンゴ           葉加瀬太郎


  
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   お月見の団子は、翌日人体改造スープの具へと変身した!
   会う人会う人に聞かれる。 「まだつづいていますか?あのスープ。」ってね。
   里帰りで膨らんだお腹は、おかげさまで元通り。
   無理はいけない。生きることは食べること。楽しみながら細々と続いている。

  
by miki3998 | 2010-09-27 23:22 | 鎌倉FM  『 おはよう鎌倉 』 | Trackback | Comments(16)

 銀座教室のお知らせ  

 
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        ***** 10月16日 土曜日  午後6時半から *****


    9月ももう22日、今夜は中秋の名月、お月見ですね。
    季節を感じる草花とのお付き合い、そんな教室に興味はあっても北鎌倉までは遠くって・・・という方、よろしければ銀座教室にいらっしゃいませんか? レッスンは夜です。仲良くさせていただいている 並木通りのBar 『 Le Sept 』にて開催。 草花だけではなく枝や蔓、実から秋を感じる会にしたいと思っています。 


    会費  7000円 ( 花材、器もご用意しました。)

        ※ ワンドリンク&軽い食事付き のりこさんが腕をふるいます。

    時間  Pm 18:30 ~ Pm 21:00 まで。
        ※ レッスンの後に御一緒にお食事をします。

    お持ちいただくもの     花ばさみだけご用意ください。




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    お申込み方法 
   コメント欄からチェックを入れて(鍵をかけて)、お名前、ご住所、電話番号をご記入ください。
   
    先着順にお知らせのお電話をおかけします。よろしくお願いします。

    なお、Le Sept へのアクセスはこちらをクリックしてください。


    


    

   
by miki3998 | 2010-09-22 13:28 | | Trackback | Comments(26)

里帰り その2  「父の柱時計」

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  実家のリビングには柱時計がかけてある。今の時計で確か3代目だったと思う。ずっとゼンマイ式の時計を愛用していて、今何時かなと思って頭をあげて時計を見るのが日課になっていた。夜になると毎日そのネジを父が踏み台に上ってギコギコとネジをまわす。右と左に二つその穴が合って、鍵のようなものを差し込んでゼンマイを回すあのタイプだ。 
  いつからかそれが電池式に代わっていた。足の悪い父が、年をとって踏み台に上がるのも危ないし、最近では指も思うように動かないらしい。電池式ならしばらくほっておいても定時になると時間の数だけボーンボーンと鳴って、時間を告げてくれる時計だ。
  その時計が針が動いてはいるのに、時刻を告げるあの音が鳴らなくなってしまったのだ。私が帰って来たというので、車で自由にでかけられるから、一緒に時計屋に修理をしてもらいに行こうということに。息子も連れて一緒にドライブがてら花巻の街へ。(ちなみに田舎では出かけることを≪まぢさ いぐべ!≫ と言う)

  阿部時計店、懐かしい。いまは亡くなってしまったけれど、私の幼稚園時代からの同級生の家だ。ジュン君という垢ぬけた感じのおぼっちゃまだった。隣はタイル屋で、そこの娘も同級生、こちらも手足の長いすらっとした美人姉妹で、みんな一緒に登下校したものだった。今は兄貴が継いでいるらしい。
  「 もさげねども この時計 いっこど音がしねぐなったのっす。 みでけねべが? 」
  父はそう言って、修理師らしいおじさんに柱時計を渡した。ギョッとした。この人も見覚えがある。すっかり白髪の老人になってしまったけれど、時計を買いに来た頃は営業畑一筋、腰が低くていねいで、時計のことなら何でも知っているって感じだったなあ。教師になって初めての給料でオメガの腕時計を買ったのもこの店。確か月賦で・・・。

  ほどなくしてその人は店の奥から直した時計を持って出てきた。頭の上に修理をするときのあの顕微鏡のようなメガネをずらし、腕には黒い肘カバー、職人スタイルだ。若い頃よりひとまわり体が小さくなったような気がしたが、笑顔は変わらない。あの人だ。

   「 これでだいじょぶだ。音っこなるよ。 電池代だげいだだぐなは。 それにしても Tさんはとしとらねなぁ。 」
   「 あいや、 ほだったっか? もさげねぇなあ。 ありがど ありがど。」
    
  父は嬉しいと 同じ言葉を何度も繰り返す癖がある。 ありがど ありがど・・・。

  時間にしたらわずか3分、電池代220円なりで時計は直った。こんなことでもなければ私もこの店には足を運ばなかったろう。電池も時計も、暮らしの買い物は大手の量販店に行きがちで、壊れれば新しいものを買う時代。壊れたとしても、まずは直して使おうとする父や母。子供の年齢と同じくらいの時間と生活を共にした家財道具が我が家に多いのが改めて分かる。 父は嬉しそうに時計を抱えて車に乗った。


     
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 祭りが近づき、街のあちこちに神輿や山車が準備されている。帰りに寄った照井団子屋の隣にも町内会の神輿が出番を待っていた。 この店の団子はうまい。餡子に醤油、お茶餅に経木団子。きりせんしょもうまいが、一番好きなのが経木団子。 黒蜜と胡桃が入っていて、別名無調法団子。 一口で食べないと黒蜜が飛び出し周りを汚しかねない。

    「 はれでいがったなっす。 まづりのあいだばりも ふらねでければいいどもねぇ。」
    「 うだうだぁ。 なしてだがぁ、おまづりのどぎ かならず あめふるっけをねぇ。」
 
   団子をつつみながら心配そうに空を見上げるおばちゃん。私も同じ空を見上げて同じことを祈った。 祭りはこの日から始まり、小中学生は午前授業。みんな山車を引く稚児さんや神輿の担ぎ手として活躍する。  そろそろマウイも帰ってくる頃、急いで帰らねば。
   
by miki3998 | 2010-09-21 15:56 | 家族

読むラジオ 9月20日 「 秋はシャンソンだ! 」  

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  里帰り夏編はいったんおやすみして、ラジオのお話。
  今朝は久しぶりに私一人だったんですよ。カヤッカ―の城後さんは連休中伊豆の海へ。来週はいつも通りUstreamでアーカイブできるように設定しますので、クリックして聴いてくださいね。

  ということで、芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋・・・秋と言えばどんなことをイメージするでしょう? おはトークのお題は「お月見」。今週22日が中秋の名月ですね。お月見→団子→ススキ→フジバカマ・・・。連想ゲームではありませんが、お月見といえば秋の七草でしょう。今日も暑かったものの、鎌倉山を車で走っていても、土手にヒガンバナが咲いていたり、フジバカマやホトトギスの花が庭を彩ったり、秋こそ日本の草花の美しさが映える季節はないかもしれません。

  番組が始まってすぐ、ハプニングが・・・・。ヘビーリスナーで毎週メールをよせてくれるまっちゃんがスタジオに遊びに来てくれました。嬉しいなあ。それもお土産付きです。昨日三崎の朝市に行って、戦利品ゲット。おいしそうなオレンジをたくさん持ってきてくれました。ありがとう、まっちゃん。もちろん番組最後までゲストとしてこの夏の旅について熱く語ってくれました。彼は先週世界遺産の熊野古道にいってきたのです。鎌倉もその登録にむけて招致運動が起こっていますが、まっちゃんなりの世界遺産論を聞かせていただきました。


  写真の紫色の花はバンダという蘭です。器は、バリのウブドにあるホテル「アマンダリ」のショップで求めたもの。蓋つきの籠には、温かいクロワッサンが入ってサーブされるんです。一目で気に入ってお持ち帰り。花入れとして使っています。 この花とお揃いのようなCDジャケット 見えますか?
 今朝の音源・金子由香利のベスト盤です。ジャズやボサノバ、ロックなどいろいろかけてきましたが、シャンソンははじめてかけました。一応4曲ほど用意して行きましたが、まっちゃんのお話が楽しくて、2曲しかかけられませんでした。機会を見てまたかけようと思います。 枯れ葉を踏みしめて歩くこの季節・・・シャンソンはやっぱり秋!ですよね。


   この日の音源 
    1. 湘南セプテンバー         サザンオールスターズ
    2. 逢い引き             金子 由香利
    3. 巴里の屋根の下          金子 由香利
    4. 再会
    5. 時は過ぎゆく           ※ 4.5の2曲は次の機会にかけます。

  ちなみに『逢い引き』は私が一番好きな曲。1972年ドッチオ・テッサリ監督でアラン・ドロン主演の映画『ビッグ・ガン』の主題歌でもあり、現在放送中のBS日テレ「イタリアの小さな村の物語」のテーマソングにもなっています。映画もよかったし、小さな村の物語もなかなかいい番組。 そちらはオルネラ・ヴァノーニが歌っていますが、何度聴いてもジーンときます。(イタリア語ならカンツォーネ?フランス語ならシャンソン、では、日本語なら・・・演歌かしらん?) 


  
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   番組後半は秋の鎌倉のイベント紹介とおススメ本のお話。先日届いたばかりの「暮らしのヒント集第2刊」(松浦 弥太郎著、暮らしの手帖社)の紹介をしました。鎌倉でも松浦ファンが増殖中。美しい豊かな暮らしは小さな工夫から。ぜひ書店でお手にして見てください。一緒に映っている「BRUTUS」も編集者Y君からのいただきもの。「マイ、オールデン」、「エルメスのグローブはなぜ高い?」など、こちらも必見。 こりゃあ どちらも買い!ですぞ!!! (笑)
by miki3998 | 2010-09-20 21:08 | 鎌倉FM  『 おはよう鎌倉 』 | Trackback | Comments(14)

   里帰り その1   「 深夜バスの旅 」

 
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     ( 息子と往きの横須賀線で。親子とはいえ、同じポーズ!? 笑っちゃいます。)

  今年は息子と青春18切符で里帰りを予定していたのに、ドジしちゃいました。
  9月10日まで有効なので、購入も旅の前日にでもJRの窓口で変えるものと勘違いしていた私。買えるのは9月1日まで、6日のラジオが終わって息子に言われるまでまったく気が付きませんでした。まったく、もう~~~なお袋です。そこで単に新幹線の旅は当たり前というわけで、急きょネットで検索。なんとか別な方法でこの夏は里帰りしようと「深夜バス」にトライしてみました。
  6日ラジオが終わってその夜出発、花巻につくのは翌朝の8時半です。次のラジオの仕事に支障がないように鎌倉に戻るには一日だってもったいない。できるだけ両親の傍にいてあげたい、そして料金は新幹線の3分の1、息子も乗り気で早速予約。出発は東京駅23時15分、新丸ビル前です。


  
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(  夜の丸の内。ビルの灯りが宝石のようです。夜の姿もデザインされています。)

  以前先輩が深夜バスで帰郷した際、どこか寂しく侘びしさを感じたと言っていましたが、なんのなんの、バスはほぼ満員でカップルや若者、サラリーマン風の30代の男性が多く、親子で乗り込んでいるのはうちだけ。なんだかワクワクしてきました。目的地は同じ東北。福島や仙台、終点盛岡まで夜の東北道を突っ走ります。


  
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   息子はバスの旅には慣れているので、始めはツイッターで実況中継をしながらはしゃいでましたが、仙台あたりでダウン。この頃は外も白み始め、窓から見えるのは緑多き古川あたりでしょうか。私も乗車して1時間くらいはカーテンの外を眺めていましたが、気がつけば爆睡。トイレタイム以外は夢の中でした。新幹線なら3時間、深夜バスは9時間、料金は3分の一でも かかる時間は3倍です。さて、安いと見るか高いと感じるか・・・。ちなみにリクライニングシートとはいえ、歩きまわれないので同じ姿勢がしばらく続きますから、年配の方にはちょっと辛いかもしれませんね。私? 若いつもりですってば!(笑)

  
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水沢(いまの奥州市)あたりから見覚えのある景色が目に入り始め、7時過ぎにはスッキリ目覚めた私は、北上に入るともうわが庭のようなもの。(笑)黄金色の稲が並ぶ田んぼやおおらかに流れる北上川、早朝の商店街に開店前の床屋や学生時代に立ち寄った本屋などが目に入ってきます。
 「ただいま。」とつぶやきながら、バスの旅ならではの故郷の街がより身近に感じられる朝でした。

  
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  停留場は実家から15分ほどの在来線花巻駅の裏口。息子と二人歩いて到着。リビングから父がこちらを見ている様子がわかり、息子と私は大きく手を振ります。おじぎをする父。分かっていないなあ、たぶん、誰かご近所の人だと思い挨拶をしているつもりのようです。いつもなら新幹線で帰り、駅からタクシーで乗り付けるのですから、まさか深夜バスで帰ってくるとは思わなかったのでしょう。まして、駅から歩いてくるとは・・・。父も母も驚いていました。

「 Kちゃんさ似だひとだなあっておもってらったな。つかれだべぇ。なんたらなあ、帰りは切符買ってやるがら 新幹線でかえるんだっちゃ。」

  父は喜びながらも今にも泣きそうな顔でそう言いました。母もあきれ顔です。50をとうに過ぎた娘が、リュックを背負って、孫と二人駅から歩いてきたなんて・・・それも朝から。

   「 おめはんも わげぐねんだがらっす。 まだぐあいわるぐなったら なんじょするのっす。」 
  母は相当怒ってます。 来た早々説教されました。まだ病み上がりだと思っていますし、確かに若くない・・・。どこまでも心配ばかりかける親不孝な娘だあ・・・です。

  どうやら年寄りには深夜バスは 昔の物悲しい上京風景を思わせるのでしょう。不評でした!
  なんの準備もしていなかったとブツブツ言いながらも、手添えなしで普段どおりの朝食をさっと用意してくれました。母の作った好物の漬物を食べながら温かいみそ汁とおいしいご飯にありつけたのですから、私も息子も大満足の旅だったのですがね。(笑)
by miki3998 | 2010-09-18 11:39 | 家族 | Trackback | Comments(19)

4時の月

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月曜の朝、 スタジオに向かうのは5時。3時には起きて準備を始める。朝食の用意を済ませ、届いたばかりの新聞に目を通す。忘れ物はないか、音源は持ったな、資料はよし、そろってる。ゴミ袋を二つ抱えて坂を下る。外は白み始め、東の空に4時の月を見つける。月と星、上る朝日が同じ空に存在する時間だ。車のドアを開ける時、決まってこの空を見上げる。今週もこうして始まる。
by miki3998 | 2010-09-06 22:28 | 今日のつぶやき | Trackback(1) | Comments(22)

10年かかった・・・。

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一昨日、待ちに待った植木屋さんが来てくれた。脳梗塞を患い入院していたと言うので、いつもより遅くなってしまったけれど、退院後真っ先に私との約束を忘れずに庭の剪定に来てくれたのだ。この日も外はゆうに35度を超えていたに違いない。サンゴジュもオオデマリも、お隣との境界線ギリギリに育ち、内心ハラハラしていた。雑草も半端じゃないあり様で、北鎌倉のジャングルと化してい、狭い庭がますます狭く感じられた。

 8時半にはもう草取りが始まり、10時のお茶を挟んでまた草取り。テラスの下からはコウゾや山ぶどうが大木となり、我が物顔で繁殖(?)していたので、腰をかがめながら丁寧に伐採(??)してくれた。病み上がりなので、私も心配になり、途中から一緒に庭で指図をしながら仕事ぶりを眺めていた。

 「おじさん、オリーブの木も少し整理したいんだけど・・・。」
 「いいのかい? じゃあ 切りたい枝を指図してくれ。」

 植木屋さんもオリーブだけは どこをどう切ればいいのかわからないらしい。これまでは一度もお願いしたことがないオリーブ。自分なりに枝を切って、リースにしたり生け込んでみたり・・・自己流の剪定で満足していたのだ。

 この家を建てたときに友人に好きなものを買って欲しいとお祝をいただき、記念樹のつもりで植えたのだから そろそろ10年がたつ。残念なことに一度も実をつけたことがない。花も見たことがなかった。隣に違う種類のオリーブを植えてみたが、どちらも咲かず実らずの月日がたっていた。

  
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  2階のベランダあたりまで伸びたオリーブを、おじさんが乗る梯子を下で支えながら、その成長ぶりを眺めていた。日差しは容赦なく照りつける。眩暈が起きそうな瞬間もあった。おじさんは首のタオルで何度も汗をぬぐった。混み合ったオリーブの枝には細い枝、短い枝が複雑に交差していて、上に伸びた枝ほどしっかり太く成長していて、陽はほんの少ししか漏れてこない。長い間、手を入れなかった証拠だ。


  10年、いろいろあった。家もそろそろメンテナンスが必要だと施工先からの案内も届いていた。そうか、春に入院した時は、自分のメンテナンスで精いっぱいだったけれど、家も大事に育てて行かないとなあ。毎日があっという間に過ぎて、頭の中は家族のこと、仕事のことだけだったかもしれない。年のせいでキャパシティが狭くなっているのか、それとも元々たいしたこともないくせに、なんでも首を突っ込み、力以上に背伸びをしていたか・・・。いずれ楽なことばかりを選んではいられなかった。それでも私は口癖のように、「何とかなるさ」でやってきたこの一年。届を出す前から7年も一人だったのだから、状況に大きな違いはなかったはず・・・。変わったのは、潔く自分ひとり前を向いて歩くと決めたことだけだ。気持ちは大丈夫、息子たちもいる、それでいい。
 


  「 奥さん、枝を受け止めてくれ。」

  おじさんが投げてよこした大きなオリーブの枝を受け止めたとき、ほんの少し柔らかい風が通り抜けた気がした。

  「 あれっ、実がついている!」


  10年目のオリーブは、枝先に小さな実が頼りなげにぶら下がっているではないか。切り落とされた枝を夢中で探した。こっちにも、あっちにも・・・、そして今おじさんが切ろうとしている枝の先にも黄緑色のオーバルの実がいくつも実っているのだ。
  
  「 おじさん、その枝、切らないで。実がなっているんだもの。ありがとう、おじさん、もういい。このままでいい。」

   
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  採れたオリーブはせいぜい20個ぐらいだったが、よく見ると木の上にはまだまだ実がいっぱいついていた。収穫するにはまだ早いが しっかりした美しい実だ。 葉の表と裏の表情が違うことから好きで選んだオリーブであり、実を採るために植えたつもりはなかったのに、花も実もつかないと愚痴ったことがあったかもしれない。手入れが悪いのを棚に上げてまったく勝手な庭主だ。 いつしか諦めて ただ眺めるだけのオリーブにしていたのは自分だったのだ。もしこの日、植木屋のおじさんに任せて 外に出てこないで剪定された樹木がただ捨てられていたとしたら、このオリーブの実にはお目にかかれなかった。

  「 よかったなあ、手伝ってくれたおかげで、思わぬ贈りものだ。」


  感動している私とは別に、淡々と手際良く片付け始めるおじさん。庭はきれいになり、風通しも良く地面もサッパリとして、水まきも楽しくなるような庭へと整えてくれた。もう4時になろうとしていた。ありがとう、おじさん。静かな感動が、後から後から湧いてくる。

 

  10年は長いようで短かった。毎日が戦争のように思えたときもあるし、穏やかに過ごしたいと、丹沢と向き合った日もある。成す術を知らず、途方に暮れた日もある。その間には大切なものに気づかずに通り過ぎてきたことや、実は手にしているもの価値を忘れてよそ見をしていた時もあっただろう。いかに自分が愚かなのかは 誰に言われずとも痛感している。


  オリーブは日差しさへあれば、十分な雨が降らずとも育つ樹木だ。風が吹けば柔軟にたわみ、日差しの方向に伸びて行く横這性を持つ。そしていつか花が咲き実は生るのだ。信じるしかない、きっと結実の日が来ることを。子供たちの成長を、家族の出来事を見守ってきたオリーブに、改めて愛おしさと頼もしさを感じた。 
愚かな私は、それを知るのに 10年かかった。
by miki3998 | 2010-09-03 09:49 | 今日のつぶやき | Trackback | Comments(60)

風と海と丹沢が好き。山の家での毎日を綴っています。鎌倉FMのパーソナリティです。


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