素材を活かす

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 朝の散歩をしていたら、馴染みの庭師さんがご近所の庭木の剪定に来ていました。歩きながら鋏の音がするほうに近づいてみると、マユミやクヌギ、コナラの木を整理して母屋に陽があたるように丁寧に仕事をしているのです。切ったばかりの古い枝や枯れ葉が山盛りになっていて、黄金色のクヌギの間に、山吹色に紅葉したサンキライを見つけました。
 「おじさん、これもらってもいい?」と聞くと、「そんなものもらっていってどうすんだい、もうすぐ葉が落ちるよ。」と不思議そうにこちらを見ています。「いいの、落ちても。きれいだからもらっていくね。」おじさんは笑いながら、「いくらでも持ってきな。」そう言いました。

 何に使うと言われても、すぐにリースとは答えませんでした。自分でもどんなものにするかを考えたわけではなく、陽射しをいっぱいに浴びたハート形のサンキライがキラキラして見えたから、思わず欲しい!と思っただけ。ついこの前までは、緑色で厚みがあって、長い蔓がフェンスにからまったり、マユミのそばのウツギにかぶさるように伸びていたサンキライ。色よく緑から黄色、山吹色へと変化してゆく様を想像しながら、鼻歌まじりで坂を上って帰ってきました。


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 小淵沢や京都でも同じように、リースの素材を探しながら上ばかりを見るのではなく、足元も気をつけてみると、落ち葉だけではなく、日陰のかずらや落ちたドングリの帽子、新しく目がでたばかりの楓の苗を見つけたりします。風に飛ばされないよう、その上に大きめの朴の葉がかぶさっていたり、枯れ草の中にそこだけ若々しい色の葉っぱがたたずむように落ちていることもあるのです。

 リースは実や蔓だけではなく、落ちた葉っぱの表情が面白いものも使います。虫食いもよじれたり丸まったりした葉っぱも存在感があるからです。その葉の上に小さい実を並べて船の上の小人のような錯覚さえ覚えたり、ドングリの帽子が思わぬリズムを生んだりします。山や森のザワザワした感じ、静かに日が暮れる様、ワクワクしながら朝を迎える様子。。。思い描く風景は様々。そんなイメージを抱きながら、素材をより活かす置き方、絡め方を工夫します。

 

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  もしかしたら、リースのイメージからかけはなれるかもしれませんが、集めた素材を十二分に活かすとは、また森に返してあげるような思いでひとつひとつ土台となる黒文字やヒュウガミズキのフレームにおいてゆけばいいのかもしれません。落ち葉の上にまた違う落ち葉、その間から見え隠れする木の実や苔、風で飛んだ枝や蔓を、まるでこぼれ落ちたように、あるいは蒔いたように素材を無心に並べるだけでも素敵なリースになると思います。


  
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Commented at 2012-12-14 16:28
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by miki3998 at 2012-12-15 19:46
コメントさま、了解です。ありがとうございました。またの機会にお目にかかりましょう。
by miki3998 | 2012-12-13 07:00 | リース | Comments(2)

森とラジオと食卓と…草花の仕事とラジオパーソナリティ、やってます。


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