石楠花の庭

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  父の介護ベッドは今、みんなが集まる茶の間に置いていて、障子を開けると縁側越しに庭の木の花が見える。シャクナゲも赤花ドウダンツツジも、奥には牡丹やツツジ、海棠の花も目に入る位置だ。

  手入れはもっぱら母の仕事で、父は眺めて楽しむだけ…それでも二人で草花の話になると、自然に表情は和らぎ会話も弾む。


 
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  〈松の花〉


 一昨年から毎月花巻に帰り、わずか一週間だが父と居るようにしている。父はもともと痛い痒い、あれがしたいこれがしたいなどと小言を言うわけでもなく愚痴も聞いたことがない。老いて筋力も衰え、手足は痩せこけ声もかすれ気味になった。何かしてあげるたびにそのかすれた声で「ありがど、ありがど…」、口から出るのはその言葉だけである。


 
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 〈牡丹の実 タネ〉


  花は咲きしぼみ枯れて、いずれは朽ちる。がそれで終わりではなく、実をつけタネを残し土に還り、やがてまた芽をだすのだ。終わりは始まりであり、全ては繋がっている。
  子や孫、ひ孫の成長を思い、咲く花の向こうに目をやる父の横顔は穏やかだ。



Commented by hanamomo08 at 2018-05-20 15:25
おかえりなさい。
久し振りの我が家もいいでしょう。

> 子や孫、ひ孫の成長を思い、咲く花の向こうに目をやる父の横顔は穏やかだ
そんな風に思えるmikiさんはやっぱりおおきなひとだな~と感慨深い思いです。
花のように、そうですね、身をつけ次の世代を残して終わる。
人も皆同じですね。
いいことばをありがとう。
Commented by miki3998 at 2018-05-21 00:02
momoさん、おばんです。
昨夜遅く北鎌倉に戻りました。
実は週末に父が入院しまして、私も一緒に救急車に乗りました。覚悟が必要な時期が来たのだと思いました。昨日病院を後にした時には、父は眠っていてね。でもお昼は私が世話をするとご飯を少し食べてくれたんですよ。寝顔を見る時、元気に退院して、また花の見えるベッドにもどってきますよう…願いを込めてこの投稿をしました。
by miki3998 | 2018-05-19 13:33 | | Comments(2)

森とラジオと食卓と…草花の仕事とラジオパーソナリティ、やってます。


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