カテゴリ:家族( 98 )

ひっつみと5月の田んぼ

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  昨日まで父はショートスティ。里帰りは父が戻る日を見計らって今日の夕方花巻に帰ってきた。
  寝たきりになった父が、ベッドから頭をあげて私の帰りを喜んで迎えてくれる。ちょうど遅めの夕飯時で、いつもより食もすすんで一緒に食べる。まずは私が父の世話をする。今夜はホタテ入りの〈ひっつみ〉だ。岩手では、すいとんのことをこう呼ぶ。うどん粉をこねて丸めて引っ張って…母の手から作り出されたおふくろの味は格別。どんぶり一杯を平らげる。


 
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  北鎌倉は昨日の雨も止み、朝から上天気、ぐんぐん気温も上がって夏日となった。ラジオの仕事を終えて坂道を登る。昨夜の母からの電話が気になって、着替えに戻って新幹線に乗ろうと決めた。寝不足もあってか流石に足取りは重い。
 見上げた空の青さと新緑の輝くような青さが5月の色なのかもしれない。清々しさが、今日はなぜか悲しい。あれこれ思い悩んでも仕方ないのだけれど、解決の糸口を見つけるよう努力するしかない。


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 仙台を過ぎると車窓からの景色が一変する。水を張った田んぼに映る夕焼けが、風が起こすさざ波に消される。広大な大地が茜色に染まり、やがて静かに闇へと溶ける。
今朝ラジオの帰り、 庭づくりの先輩にこんなことを言われた。
「帰る家があっていいわね。ご両親が生きてらっしゃるのもしあわせなことよ。私は20年前からひとり。世話をしてやりたくてももう親はいないの。行ってらっしゃい。楽しんできてね。」

  91歳の父と83歳の母が、待っている。62歳で両親共に健在ということ自体ありがたいこと、時間を工面すれば帰れるのだから。自分を必要としている人のもとへ… 。明日も晴れる。
 

  
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〈Yesterday Today and T omorrow〉

by miki3998 | 2018-05-14 22:34 | 家族 | Trackback | Comments(4)

日々の営みの中に…

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  〈黄花カタクリ〉
 
 暮らしに大きなメリハリがなくとも、継続することで力となり成果が生まれます。怠ることなく丁寧に積み重ねることに意味があるのだと思います。


 仕事も家事も子育ても、平凡な毎日の中に一筋の輝く瞬間があります。それを感じるかどうか、見落とさずに自分のものにできるかどうか… 


老いても毎朝決まった時間に父を起こし、体によい旬の食材を選び調理した献立は、派手さはないものの、食べやすく舌触りの良い形で喉を通る料理が、父の食欲を呼び起こすのです。声をかけ、時には励ましながら父と向き合う母の後ろ姿を見ていると、生きることの尊さがそこにある気がしいたしました。



 



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  〈実家の周りの草花を集めて…緑はカンゾウとコンフリーの葉です〉

by miki3998 | 2018-05-02 17:55 | 家族 | Trackback | Comments(3)

山藤と母子草

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3時を過ぎたら、曇った空はみるみるうちに青空を変わり、見上げると薄紫色の藤の花が空を泳いでいた。鎌倉に住んでいると、庭先や棚仕立ての藤の花を見かけるので珍しくはないけれど、山の藤は初夏の訪れを感じさせる。散り始めると薄紫の豆の花が彼方此方に散らばっていて厄介かもしれない。




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  この道を通るとよく見かけるご主人は、自分の土地でもないのに掃き掃除をしている。この斜面を持っていた御宅のご主人が若くして亡くなり、気の毒だからと代わりにこの辺りを掃除しているのだそうだ。母と子だけになり、やがてその母親も年老いて息子が面倒をみている。それだけでも気の毒だから私がね…と、にこやかな表情で掃除を続ける。こんな人がいるから、この道は美しく保たれているのだ。


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 新緑も徐々に広がり、山は柔らかい色合いで4月の空に溶け込む。5月になれば空の青さも緑の深さも増すだろう。

  母子草を見つけた。夫を亡くした母と子だけのあの家の石垣に、まるで母と子供がしっかり手を繋いで立っているような咲き姿だった。



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by miki3998 | 2018-04-18 18:05 | 家族 | Trackback | Comments(0)

イグネ 〜仙台平野に浮かぶ緑の島〜 を観て


二度も見てしまった。
BS3 プレミアムカフェ「イグネ 〜仙台平野に浮かぶ緑の島〜」

長喜城と呼ばれる集落のお話である。初回放送は2002年、仙台市内の農業を営む人達の一年を追った内容で、じっくり丁寧に作られていて見応えがあった。
宮城県出身の父の実家を思い出させる場面が多々あり、懐かしさで番組を見ている途中花巻の母に電話をし、父に知らせた。
「今何見てるの?BS3チャンネルつけて見てね。」


イグネとは、家屋敷を風雪から守り、建材や燃料として利用するために周囲を取り囲むように植えられた屋敷林のこと。杉や欅、柏に檜葉、食料となる栗や胡桃、梅や銀杏など。
「イ」は家のことであり、「クネ」は地境を表すのだそうだ。私の実家花巻でも見かけるけれど、イグネと呼ぶかどうかは知らなかった。
長喜城のイグネは、仙台の緑の名所100選にも選ばれるほど、水田地帯に浮かぶ緑の島として有名らしい。もともと中世の豪族がこの地に館を築き、「喜びに満ちた不朽の城であるように」との願いを込めてつけられた屋敷名がそのまま地名となったのだそうだ。(仙台市のウェブからお借りした資料)



番組は庄司さんと大泉さん、二組の農家のご夫婦とその家族の暮らしを追っている。いずれのご夫婦も60代、愛情深く謙虚で、暮らしの知恵に長けている。大家族として代々続くしきたりや風習を守り、賢明に生きておられる。どこを切り取っても自然で、歳時記にそった生活を営んでいるのだ。祖父母として、息子夫婦として、孫として…それぞれの役目を無理なく坦々とこなし、その家の暮らしが成り立っている。
もちろん自分たちだけではない。時には集落をまとめ、助け合い、長喜城の将来を思い、後に続く者たちへ引き継いで行く。


心に残った場面がある。
庄司さんのお母さんの卒寿の祝いの会で、親戚中が集まり思い出話や励ましの言葉をかけた後、家族みんなでお婆さんの好きな童謡『浜千鳥』を合唱するのだ。お婆さんは指で指揮棒を振り、感激で涙を流す。家族みんなで歌えるのにもびっくりしたが、寝たきりでいるお婆さんが元気に歌いながら指揮棒を振る表情にも驚いた。みんなで祝い堅い絆で結ばれた家族。気取らず気張らず、どの顔も気持ちよさそうに歌う大家族。夜叉孫たちのいたわりの言葉もいい。見ているこちらまで目頭が熱くなった。



15年の間にはいろんなことがあっただろう。平成15年の新年を迎えたところで番組は終わる。その間に大泉さんは亡くなり、震災でそれぞれの家は全壊した。月日が経ち息子や孫の代に変わるが、みんな祖父や父の農業を継いで頑張っているそうだ。イグネの共同体も健在だ。

エンディングは元気な大泉さんと奥さんの玲子さんが、風で飛んできた菩提樹のタネを育苗のためにポットに植えるところで終わる。お二人で「菩提樹」の歌を口ずさみながら。なんて素晴らしいご夫婦なのだろう。静かな感動をいただいた。

先日家族揃って誕生祝いをしてもらった。実は嫁さんも同じ10月1日生まれで、毎年こうして祝ってもらっている。おかげさまで孫たちも元気だ。下の子がやっと「オバアタン。」と言えるようになった。さもないことだが、日頃の生活の中でこんな瞬間が何よりの喜びであり、幸せなのだと改めて周囲の人々に感謝するばかりだ。一年一年、ささやかな喜びを積み重ねていけたらと思う。

by miki3998 | 2017-10-12 01:34 | 家族 | Trackback | Comments(12)

秋の色

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狭い廊下のような拙宅の庭は、夏草の名残と初秋の野草が入り混じり、足の踏み場もない状態ですが、この季節独特の色合いが好きで、8月のレッスンは今ある草花でリースを作りました。空の色も空気の匂いも徐々に次の季節に移り変わる時、曖昧な色彩の中には柔軟な美しさがあるような気がします。


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 散歩が好きで、朝な夕なに裏山の森に出かけては、高台から見える景色を眺めます。北鎌倉駅のプラットフォームに滑るように止まる横須賀線の気配、長く連なる車両が入っては出て行くのです。

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 この地に住んでもう25年以上になりますが、子供達と来た道を今は孫の手を引いて森を散歩をするようになったのですから、月日は経ち年も取るわけです。
 草の匂いや風の向きを感じ、季節の移ろいの中での暮らしは、便利さよりも静けさを選んだからこそ得られる喜びがあります。そして家族もそれに共感してくれている(坂はキツイけど…笑)ことが何より嬉しいのです。


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  二人の孫は、息子がそれぞれ植物にちなんだ名前を付けてくれました。誰に頼まれたわけでもなく自分で選んだようで、何より嬉しい贈り物でした。その孫たちも4歳と2歳になりました。早いものですね、ほんとうに。

by miki3998 | 2017-09-06 15:19 | 家族 | Trackback | Comments(4)

救いたい命

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先日渋谷のNHKホールで開催された『いのちのフォーラム』に行ってきた。これは三部構成になっており、第1部は朗読劇「兄のランドセル」、第2部はトーク「新たに、いのちへの思い」、第3部がフィナーレ「あなたがいるから」と、約3時間の内容の濃いものだった。

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2006年5月、自らのガンを告白し、命を支える法案の成立を訴えた故山本孝史参議院議員の物語を朗読劇にしたもので、田中健さん、市毛良枝さんが演じた。党派を超え衆参の垣根も越えて命の大切さを訴えた山本さんの言葉は、国会を動かしガン対策基本法と自殺対策基本法を全員一致で可決され、今年施行10年を迎える。

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第2部はこの二つの法律に深く関わった人たちの「いのち」のトーク。命はどのようにして守られてきたか、今後はどうあるべきかその方向性などについて熱く語られた。特に自らも会社倒産から鬱になり、死をも覚悟した秋田の佐藤久男さんのお話は、心に迫るものがあった。佐藤さんはその後、自殺をなくそうとNPO法人蜘蛛の糸を立ち上げ活動を続けておられる。
第3部は、東日本大震災で被災した釜石市、大槌町の子供達やお母さんがたのコーラスやダンスを通じて「一緒に生きて行こう」というメッセージを発信。笑顔が眩しい子供達の元気に踊る姿に目頭が熱くなった。

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命とはなんだろう。命と向き合うとはどんなことだろう。
この世に生を受けてすくすく育つことは、実はあたり前ではない。子供も大人もいつ何時病に侵され、予想だにしない事故や災害でその命を絶たれることがあるのだ。二人に一人がガンになり、三人に一人が命をなくす。自殺もけして少なくない日本。まだまだ対策や支援のための法律を必要とする事案がある。

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このブログにある方からメッセージをいただいた。難病で心臓移植を必要とする幼い命への支援のお願いだった。現在の日本ではその手術は不可能で、渡航してアメリカでの手術を必要とする「あやめちゃんを救う会」を知ってほしい、できればラジオで告知紹介をお願いしたいということだった。莫大な費用を捻出するため、募金活動をしていることも、そのホームページを辿れば知ることができる。実は以前全く同じ年頃、同じ病気の「はなちゃんを救う会」を知り、僅かではあるが募金に協力したことがある。幸いはなちゃんはたくさんの支援者のおかげで渡航し手術をした。現在経過観察中で、ネットでその様子をお母さんの発信するSNSを通して見守っている状態だ。
医療の発達が目覚ましいとはいえ、このような事例がまた…国内での手術が叶わない状況に歯がゆい思いを抱くのは私だけではないだろう。家族だけでは払いきれない莫大な費用にも驚かされる。生かされた命を守るには…
ご相談いただいた方からの要望通り、ラジオでも呼びかけてみる。私たちにできること、まずは知ること、そして我が子、我が孫ならと慮り協力してほしい。

長い文章、最後までお読みいただきありがとうございます。ここにリンクを貼っておきます。よろしくお願いします。
「あやめちゃんを救う会」
https://www.facebook.com/saveayame/





by miki3998 | 2017-06-13 20:07 | 家族 | Comments(0)

釣り好き同士

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週末の早朝、長男が嫁さんの父親に誘われて舟釣りに行ってきたようで、午後から魚料理の準備に取りかかりました。弾むような声でその様子を報告する息子。私も忙しくて嫁さんの両親にはご無沙汰ばかりですが、事情をよくご存知で、歳時記に合わせた孫の行事や息子夫婦の暮らしを気にかけてくださり、何かと支えて頂いてます。
この日もその義父さんからのお誘いで、八景島あたりから舟を出し、職場のお仲間と一緒に釣りを楽しんできたようです。


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鯵は20匹ほど、イシモチは4匹でしょうか…小さな鯵はフライにしてサラダの上にトッピング、イシモチはオリーブオイルとレモンで蒸し焼きに、そして好物のアサリバターもたっぷりと… 美味しさはもちろんですが、釣りの様子を笑顔で話す息子から、嫁さんの父親にもかわいがられていることがなんとも嬉しくなり、いつもの食卓が華やいで見えました。
結婚は二人でするものですが、家族になるということは二人だけのものではないですね。孫の誕生もその後の成長も、見守るのは二人だけではないのです。夫婦にとって喜びは倍に、悲しみは半分にとよく言いますが、もっともっと喜び合い励ましあえるのが家族なのだと改めて思った春の日でした。

by miki3998 | 2017-03-30 20:28 | 家族 | Comments(4)

春の日…鎌倉湖畔

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彼岸の中日
お天気にも恵まれ、家族で墓参りをしました。

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まずはお掃除。女の子ですね、お手伝いをしたがる二人。お墓参りを楽しんでいる感じ。こんな一日もいいなあと…義父も孫やひ孫が会いに来てくれて、きっと喜んでいることでしょう。


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子供の成長ははやい。
下の子はまだ2歳にならないのですが、お姉ちゃんのすることをなんでも真似します。上の子はこの春から年中さん、こちらはママの言うことやすることをよく見ているのでしょう、ずいぶんとしっかりして来ました。


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墓園の周りを走り回る孫たち。おばあちゃんはついて行くのがやっと。長男は休日出勤だったため、次男坊が面倒を見てます。子供って疲れないのでしょうか。とにかくよく走り回ります。私と嫁さんは遠くから眺めているだけ。

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普段仕事や出張で、ゆっくり遊んでやれませんから、こんなさもない一日が、私にとってはとても大切。次男坊も毎日クタクタに疲れて帰って来ますが、墓参りは長男共々率先して手伝ってくれるので助かります。姪っ子二人の面倒を見る息子のまなざし、メイとオジの関係、なかなかいいもんです。


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by miki3998 | 2017-03-22 19:51 | 家族 | Comments(2)

ETV特集『認知症とともに よく生きる旅へ』を見て

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 土曜日の夜は、月曜日のラジオの準備をして過ごすのですが、つい夜更かしをしてしまいます。本番前日の日曜日は、早く寝ようと思うせいか、土曜のうちに全て整えてマイクの前にと思うからです。そんな土曜の夜に、見るとはなしにつけたテレビでこんな番組を見ました。
 Eテレの特集『認知症とともに よく生きる旅へ』です。
 39歳で病気を発症した42歳の丹野智文(たんのともふみ)さんは、二人のお嬢さんの父親で仙台にお住いのサラリーマン。自動車販売の会社でトップセールスマンでしたが、発症後は事務職へと変わって現在に至っています。一見お話の仕方もしっかりしていて、笑顔でご自分の今を語る様子からは、その若さで認知症を患っている人には見えません。ではそんな丹野さんが現在どんな症状が出るのか...
 例えばそれまで車で通勤していた丹野さんですが、運転を諦め電車通勤になります。手には「若年性アルツハイマー 本人です。ご協力をお願いします。」というカードをしっかり握って乗車していました。どこで降りたらいいのかわからなくなるというのです。得意先の顔や同僚の名前も忘れます。仕事では一字一句丁寧にノートに書き留め、繰り返し確認しながら働いています。
 番組ではそんな丹野さんのイギリス10日間の旅を通して、〈認知症と診断されても諦めない人々〉との交流を軸にしています。不安と絶望に浸っていた丹野さんが、この病気になったことが人生の終わりではなく、新たな始まりなんだと決意するまでの記録、番組開始からグイグイ引き込まれるような濃い内容のドキュメンタリーでした。



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 訪れたスコットランドでは、発症してから最低1年間、一人に一人〈リンクワーカー〉が付いて、当事者と家族を専門家に結びつけてくれます。一番大変な時に最善の選択ができるようチームを組んで絶望から抜け出せる手助けをしてくれるのです。もう15年も前からの制度だそうで、素晴らしい制度だなあと思いました。実際その病気を発症している人たちが、生き生きと過ごすためのアイデアを出し合い、自ら国に提案をしこのリンクワーカー制度を作ったのだそうです。

 『Living well with dementia.(認知症)共によく生きる』

番組では壊れていくことに恐怖し、内にこもるのではなく、病気を受け入れ工夫しながら生きている人々から気付かされ、必死でメモを取る丹野さんをカメラが追います。いざパソコンに記録する際、もうその顔も印象も忘れているのですが、それでも必死に思い出そうと自分で書いたメモの言葉をキーで叩きながら、新しく何かできる、以前の自分と一緒でなくてもいいからできるだけ自分の事は自分でする、新しい人生を続けられる...そう呟きながら明るい表情になっていく丹野さんでした。
 

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 10日間の間に17人の認知症の人々と出会うわけですが、中でも印象的だったのは、車のエンジニアだったスチュワートさん、6年前に発症しましたが車の運転は続けています。車好きな二人は話が合ってそれぞれの思いを話します。スチュワートさんは自分から車を取ったら壊れてしまう。診断前にやっていたことをやめなくていいと教えられた時、丹野さんは運転を諦めたこと、持っているもの大切にしているものを失うことは魂がもぎ取られた思いをしたのでしょう、辛かったと泣きながら話します。進行しても工夫をしているスコットランドの人々から教えられます。
 もう一人はネットで繋がっているイングランドはヨークにお住いのミッチェルさん、60歳の女性でした。看護師だったミッチェルさんは、58歳で発症し勤めていた病院を辞め、一人暮らしを始めます。彼女が始めたのは記憶装置としてのブログでした。引っ越して新しい生活に適応するだけでも大変でしたが、どこに何があるか忘れるということをネガティブに捉えるのではなく、冷蔵庫やタンスに何が入っているか写真を撮って貼るという工夫で乗り越えます。病気との格闘は終わらないが対策は必ずある。病気と共に生きることを楽しむのだと笑顔で丹野さんに話すミッチェルさん。近くに住む看護師のお嬢さんも、そんな母親を誇りに思い、病気の母親を受け入れ自立を支えています。支援は必要だけれど、当事者がリスクを冒してでも自分で行動するということが大切だと丹野さんは気づくのです。




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 旅に出る前は、他国ではどんな支援を受けているか知る旅(どちらかというの受動的な旅)だと思っていた丹野さんが、同じ病気を持っていても誇りを失わず人生を前向きにとらえて暮らす人たちに出会い、リスクのない退屈な人生を送らなくてもいい、能動的な生き方を知るのです。
 国をあげての対策はまだまだ遅れている日本です。発症すると病人としての扱いはどうすればいいかという対策ばかり探していると言っても過言ではないと思います。しかし大切なのは自分はどう生きたいかに気づくこと。残された時間を最高のものにするのは、自分自身であり、認知症と共によく生きるための工夫をしていくことです。それに気づいた丹野さんは、旅の前とは違う晴れやかな表情をしていました。希望は与えられるものではなく自分で得るものなのだと思いました。

 どんな人も生きていれば病気にもなり、いずれ死を迎えます。
 認知症は忘れていく自分が何者か見失うこと、ついさっきまで覚えていたことがゼロになる恐怖は想像を絶します。その進行を遅れさせる薬があるそうですが、止める薬、あるいは認知症にならない方法があるのなら、誰しもが手に入れたいと思うでしょう。私たちは老いとも向き合っていかなければなりません。還暦を過ぎたわたくしも最近は物忘れが増えました。両親もそれ以上で日常の生活に支障が出てきたのも事実です。しかし怖がったり悲しむより楽しむこと(言うは簡単ですが)を心がけたいものです。誰しもが通る道なのですから。そうなった時に自分らしい暮らしを送るための工夫をして、共によく生きることを教えられた貴重な番組でした。
 



by miki3998 | 2017-01-17 02:01 | 家族 | Comments(2)

『幸田家の人びと 江戸〜平成 4代の物語』を見て

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 ここ数日、BSプレミアムカフェで、代々続く家族についての番組を見ました。テーマは「家族の肖像」、いずれも数年前の番組の再放送でした。
 第一回は「受け継ぐ 京都 老舗料亭の代替わり」(14代当主の高橋英一さんから息子義弘さんへの代替わりの密着ドキュメント)、第二回は「トライエイジ 三世代の挑戦 金田一家三代の物語」(日本語研究で知られた金田一京助、春彦、秀穂の挑戦をドラマ仕立てで)、第三回が「幸田家の人びと 江戸〜平成 4代の物語」と、初回放送の日時はそれぞれ違っておりましたが、10年以上も前の番組なのに古さを感じず、新鮮な感動を覚える見応えのある番組でした。解説の狂言師野村万蔵さんのお話も良かった。継承する伝統芸能の厳しさや心構え、先代や家族への思いなど、万蔵さん流のユーモアやお考えも加わり、硬派な番組を理解する上で柔らかい印象が加わったと思います。

 中でも第三回の「幸田家の人びと...」については、明治の文豪幸田露伴とその娘、孫、曽孫と4代にわたって作家となった家族の絆についてで、露伴役に中村梅雀さん、幸田文役に原田美恵子さんが演じられ、露伴の娘たちに対する言葉やしつけが朗読劇のようになっているのです。時折玉さんがお母様の文さんのことを語られたり、曽孫の奈緒さんがその生い立ちや作家になるまでの経緯、生家を訪ねて歩く場面など、作家一族の〈血〉について考えさせられるところもありました。深夜の番組ですが、久しぶりに見応えのあるドキュメンタリーでした。




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 恥ずかしながら露伴の著書は「五重塔」しか読んだことがありませんが、この番組を見て興味を持ったのは、父の露伴よりもその娘の文さんや孫の玉さん、そして曽孫の奈緒さんです。厳格な父親の元でどのように育ちどんな考え方や生き方を教わったのか、ことさらその紡ぎ出される言葉の美しさには大いに興味が湧き、早速それぞれの著書を注文しました。
 実は昨年のお正月、NHKの「視点 論点」という番組で、奈緒さんが着物についてお話になっていたのですが、その際もいいお話だなあと感銘を受けたのを覚えております。着物には流行がなく、親子3代あるいはそれ以上継いで着られること、体のサイズが多少違っても対応できること、帯や小物使いで色々に楽しめることなど、お聞きしていて頷けることばかりでした。最近仕事で着物を着る機会をいただいたこともあって、大いに着物への関心もありましたので、まずは奈緒さんの「幸田家の着物」、文さんの「台所のおと」、そして玉さんの「幸田文の箪笥の引き出し」、以上3冊を読んでみようと思います。読後の感想はまた追ってご紹介します。




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by miki3998 | 2017-01-13 05:41 | 家族 | Comments(4)

森とラジオと食卓と…草花の仕事とラジオパーソナリティ、やってます。


by miki3998
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